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Vol.1
ゲスト:湾岸の妖精のらえもん
Vol.2
food common戸村雄太
戸村沙絵
鼎談
2
food common
戸村雄太/
戸村沙絵
IZANAGI / INVITATION
平井 崇
竹田大輔
food common

子供でも安心して食べられる、自分たちの暮らしに合った食材を使ったお菓子や料理が人気の夫婦フードユニット。メニュー開発やケータリングなど、飲食にまつわる仕事に加え、2019年12月に東京・国立市に「food common」をオープン。

https://www.instagram.com/food_common/

「デザイナーが言うまちづくりって金太郎飴みたいだね?」から始まる人との出会い。 元赤坂新オフィスのカフェデザインから始まる食との出会い。

“未来の○○”を身勝手に考える

仕事で関わったさまざまな業界の方々とああだこうだ語り合う座談会。第二回のテーマ「しょく」のゲストは、夫婦でメニュー開発やケータリングを行う戸村雄太さん・さえさんのお二人です。食ビジネスに携わるデザイナー・平井崇と三度の飯より四度の飯が好きという、食べることが好き代表・竹田大輔と、夫婦二人のサイズで、地域に根を張って食を提供していきたいと考えるfood commonとの会話は果たして噛み合うのか⁉ 第一ラウンドは、food commonの仕入れ先のひとつでもある埼玉県・所沢にあるオケヤファームにてスタートです。

INVITATIONとfood common の出会い

竹田
子供の頃は休日になるとお菓子を作っていました。夢はパティシエか建築家かと悩み、建築家を目指すも、夢叶ず、その周辺のお仕事をさせていただくようになりました。設計事務所の初任給で初めて買ったのは近鉄百貨店の焼き鳥だったな。あ~おなかすいた。

オフィスのある元赤坂から所沢へ移動するロケバスで、ライターとデザイナーが西武線をDisる会話を聞き流し、風景が変わっていく様子を眺めながらそんなことを考えていたら農園に到着した。

平井
他関係者談
たぶん、昨日Youtubeでそんなフレーズを聞いたんでしょうね…。
竹田
いや~畑はいいね~。コンテンツとしてはこれだけで完成している。
戸村(雄)
竹田さん、失礼かもしれませんが、畑が似合わないですね……。僕たちがINVITATIONさんとお仕事したのは、「元赤坂オフィスのカフェ」で提供するシーズナルドリンクの開発でしたね。そもそも最初に僕たちにお声がけをいただいた理由って何だったんでしょうか?

平井
僕たちは大きなビジネスとして食を扱う仕事に携わっていますが、食は本来すごく「個」のものですよね。われわれが食の仕事に関わるなら、ビジネス的な面だけではなくて、食の個人的な面も表現したかったんです。それで、大きな規模ではなくていいから、センスもありつつ、新しいルールや枠組みで活動されている飲食の方を探していて、ご紹介いただいたという経緯ですね。
竹田
あれは夏用のドリンクでしたね。ノンアルコールのモヒートも、マンゴーティーも、桃とトマトのスムージーも最高でした! 早くも季節は冬になりましたが……。いきなりですが、農園に来て考えた今日の座談会テーマは「醗酵との出会い」です。
平井
醗酵は、生物細胞がエネルギーを得るため行為である代謝のひとつであり、光合成以外の代謝は有機物(例外的に硝酸塩や硫酸塩などの無機物)を酸化させ、その時遊離されるエネルギーでATPを合成する。 この酸化反応の副産物の水素(もしくは電子)の排出形態により光合成以外の代謝は以下のように分類され、発酵はこれら分類のひとつである:
発酵:水素(もしくは電子)を有機物に渡す、好気呼吸:酸素に渡す、嫌気呼吸:無機物に渡す、 発酵の大きな役割は二つある。一つは上述のように有機物を酸化分解しATPを得ること。もう一つは、還元型NADを酸化型NADへ戻す役割である。Wikipediaより
竹田
食には「醗酵」って欠かせないじゃないですか。自分たちは「食の流通システムを構築したり、合理化したりする企業」のサポートという形で参入したわけです。食ビジネスにはマーケティングや流通や、さまざまな側面があるけど、食の基本である「エネルギーを得るための行為というだけでなく、生活のために欠かせないもの」っていうのは忘れたくないなと。それに関わっていくなら、自分たちが行うビジネスも「醗酵」していってほしいと思う。同時に、food commonさんがオープンさせたカフェは、国立という地元に根を張って「醗酵」していこうとしていますよね。それが今後どうなっていくのかということにもすごく興味があるんです。

戸村(雄)
意外とちゃんと深かった(笑)。でも、パンだったり、味噌づくりだったり、僕ら自身にとっても醗酵は身近なテーマです。食ビジネスが「醗酵」していくという考え方は素敵かもしれないですね。

普通(common)はひとりひとり違う

平井
ちなみにユニット名も店名もfood commonですよね?どんな意味があるんですか?
戸村(雄)
僕はもともと「普通(common)」という言葉が好きなんです。普通ってすごく平凡のような気がするけど、めちゃくちゃ個性的な言葉だと思いませんか? だって、人ひとりひとりにとって普通の意味ってかわってきますよね。
戸村(沙)
自分たちにとっての普通を実現する場が、food commonということですね。
平井
「食」って当たり前にあるものだけど、ただ食べて栄養にするだけじゃなくて、それを通して関係性をよくする役割もありますよね。food commonさんのケータリングやカフェという形態も、「食」で心地よい世界を作る方法を模索しているのかなと感じます。
竹田
それがいい世界を作るための発酵につながるのかなと思ったんです。その発酵って僕たちにもできないのかなと。だから会社にカフェスペースを作ってみたり、種を撒いている感じです。もちろん会社ですから、ビジネスモデルを作ることは見すえていかなきゃいけないけれども。(周囲を見回しながら)ちなみに農作物の生産者さんはどうやって探すんですか?
戸村(雄)
ここは珍しい例で、もともと農家だということは知らないまま知り合って、家に遊びに来たら実は農園だったという経緯です。でも知り合いだからではなくて、食べてみたらおいしかったからですね。あとは「気になったら電話してみる」こともあります。この間は青森で“一球入魂かぼちゃ”の生産者さんとお会いしてきました。かぼちゃは通常、1株に数個の実がなるんですが、これは1株に1個しか結実しないんです。これが気になったので、市役所に電話して「農家さんを紹介してください」と頼んで行ってみる。お話を聞いて、こちらも「こう使いたい」というアイデアを話したりして、関係性を作っていっています。

戸村(沙)
やっぱり野菜も、誰が作っているかを知りたいんです。でもそんなにがんばって探しているという意識ではないですね。自然につながっていくような感じ。
戸村(雄)
せっかく二人という最小単位でお店をやるのであれば、できるだけ自分の目で見て、わかっている物を使いたいんです。自分が会社に勤めていた時、目の届かない範囲のことがすごくあったのが気になっていて。だから国立市という地域にお店を根づかせていくなら、できるだけすべてに目を配っていきたい。僕は野菜でも肉でも、作っている人がいちばんかっこいいと思うんです。直接会って、話を聞いて、かっこよさを感じ取りながら、生産者さんの思いごと提供していきたい。それを食べてくれる人に伝えるのであれば、会いに行くのは必須かなと思っています。
平井
以前に勤めていた会社で伝統工芸のセレクトショップを作って、販売を一時担当していたんです。その時に思ったのは、作品を作っている人と直接会うと、売る方の気持ちが変わるということ。熱を帯びた言葉で話せるし、「伝えたい」という熱量が増えます。物の背景にあるストーリーごと伝えられるし、それが物の付加価値になるんだなと思います。食の展示会でも、技術が進んでスマホ決済で何でもできる時代に、リアルな店舗がある意味はどこにあるだろうという話になるんです。やはりそこで出てくるのは、体験だったり、ストーリーだったり、そこで過ごす時間だという話になりますね。
戸村(雄)
食の場合は、ストーリーを知ることが安心感という言葉にもつながりますね。誰が作って、誰が料理して、どう提供されるかがすごく大事じゃないですか。味ももちろん大事なんだけど、味って感情や環境にもすごく左右されますよね。それを引き上げるのが、平井さんがおっしゃる背景であり、安心感だと思っています。僕たちが生産者に会いに行く理由も、そこにあるのかもしれません。
竹田
でも、単純に食材を探しにいきたい欲というのも出そうだよね。旅したい、みたいな。
戸村(雄)
出てくるとは思いますね。理想を言えば、1か月ぐらい食材探しの旅に出たいなとか。
戸村(沙)
旅行に行ってしっかり休んで、そこで食べた物をメニューに生かしたりできると楽しいですね~。
竹田
今って、料理人がいちばん、自由な感性で物事を解釈して物を作れるんじゃないかと思います。そういう意味では、
デザイナーや建築家はダサい(笑)。料理人はかっこいい(笑)
デザイナーや建築家はダサい(笑)。料理人はかっこいい(笑)
デザイナーや建築家はダサい(笑)。料理人はかっこいい(笑)
平井
自分の感性だけで完結できる部分が料理人にはありますからね。もちろん、それはそれで大変な部分はあると思いますが。グラフィックや設計はクライアントありきで、自分の作品という意識とはやはり違いますよね。

戸村(雄)
「作るのが好きな人」と「おもてなしするのが好きな人」とでも違うかもしれないですけどね。僕はやはり「こうじゃなきゃ」っていうこだわりがそこまで強くないので、「作る人」である妻をサポートする役かなと思っています。

急激に変化する農業を取り巻く環境

竹田
農業という仕事には、やはり「醗酵」を感じますよね。基本的なことがわかっていなくて申し訳ないのですが、農園では基本的に一年中野菜を作っているものですか? (奥様とともにオケヤファームを営む、陶芸家の町田裕也さんが登場)
町田
それは本当に地域や状況によりますね。例えばうちの父の故郷である岩手では、あたたかい時期はお米を作っていますが、寒い時期は何も採れないから出稼ぎをする家もあるそうです。温暖な沖縄でも台風があるから、その時期には丈夫なサトウキビしか作れないとかね。この地域(埼玉県)は水害も少ないし、冬に雪もほぼ降らないから冬でも根菜類が採れますが、当然一年中同じ物が採れるわけではありません。それに野菜の出来は、当然ですが気候や気温に大きく影響されます。
平井
都市の人間からすると農業=自然とともに生きるスローライフみたいなイメージを抱きがちですけど、実際にはそんなに呑気ではないですよね。
町田
そうですね。古くからある仕事だからといって、世の中の影響を受けないわけにはいかないです。流通の変化や気候の変化、生産者の高齢化、さまざまな問題が絡み合って10年、いや5年前の常識が通じない状況です。
戸村(雄)
高齢化に関してですが、やはり農業をやりたいという人は少ないですか?
町田
僕自身がやりたがらなくて一度外に出ましたからね(笑)。両親も農園の苦労を知っているからこそ「後を継げ」と言うことはなかったですし。第一次産業は安定しているように思えるかもしれませんが、気候の変化や流通の変化、全国の供給のバランスなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っていますから。

竹田
状況もめまぐるしく変わるし、体力も必要だから、若手が欲しいところやけどね。
町田
そうですね。でも若い人だと早朝から深夜まで、まさに身を粉にして働いちゃったりしていますね。
竹田
ブラック企業だ。流通のシステムにのせるとなると、都市のよくない働き方と一緒になっちゃうんですね。
平井
農作物で言うと、増税の影響も大きいですよね。物流含め、中間コストが高くなっていく。そのしわ寄せが生産者に行くという。
町田
そうですね。食品は軽減税率の対象だから8%ですが、作物を詰める袋や箱は10%。そういうねじれが生まれています。数十年前に比べ、野菜の値段は下がっているし、そういう中でどう生活基盤を安定させていくかを考えると、やはり農家にも進化が必要なんです。
竹田
農業のネクストも必要か……。
町田
生産を効率化するために設備投資をするのも一つですが、そうなると借金を返すためにまた作らなきゃいけない。じゃあ、どういう道を選ぶのかがそれぞれの選択ですね。でも、売る場所が増えているという面もあるんです。直売所やネット販売という方法で、小さな規模でやっていくという選択もまた可能でしょうね。
戸村(雄)
それはそれでまた別の苦労もありそうですね。
町田
そうですね。僕は陶芸家として作品を販売しています。農業と作陶という仕事は離れているようにも見えますが、流通や世の中の変化によってサイクルが早くなったり、複雑になったりという部分はどちらも同じと感じますね。農作物が農協を通してだけでない販売ルートが増えたのと同じように、陶芸作品なら、展示や小売店への納品だけでなくインスタグラムなどのSNS発信の影響で人の手に渡るスピードは格段に速くなっているし、地方や中国などの海外の顧客がぐっと増えたという面がありますね。
戸村(雄)
いいものを作りたいという気持ちはどの生産者さんもありますからね。でも生活を営みながら、時代のプラットフォームにどう合わせていくか。そこはどんな仕事でも出てくる課題なんだと思います。
竹田
農業は都市の人間が考えるようなライフスタイルとかの「コンテンツ」ではなく、産業なんだよね。当たり前のことだけど、その部分をつい忘れてしまっていたなと思います。注目するべきは「醗酵」というよりも、「醗酵」を生み出す大きな「循環」のサイクルなのかもしれない。循環することで新しい価値を生み出していかなきゃいけないのは、今の時代にある以上どこも同じ。でもその循環の過程で、どんな熟成や醗酵を生み出すかなのかもしれないね。
戸村(雄)
あれ、また意外といいまとめになっている!
―ここでオケヤファームを後にして、雄太さんのご実家である東京の西にある町の中華料理屋さん・「京八」へ移動。地域に根付いた飲食店というfood commonのルーツともいえる場所で、第二ラウンドのゴングが鳴った――

大きな食ビジネスとローカルな食ビジネス

一同
(揚げたての唐揚げを前に)わ~!
戸村(雄)
親父の唐揚げ、めちゃくちゃうまいんです。揚げるのが大変ということでメニューにはないんですけど、今日は特別です!

戸村(沙)
ぬか漬けもすごくおいしいんですよ。
竹田
中華の唐揚げってやっぱりうまいよね~。では今日はお疲れさまでした!乾杯!
平井
いやいや、まだ終わってないでしょう! もう少し突っ込んで話してくださいよ。

デザイナーが言う「まちづくり」って金太郎飴みたいだね?

竹田
え~(ビールを飲みながら)。僕はずっと、なんで国立市なのかなと思っていたんです。でも今日、車で国立市を通過して何となくわかってきました。東京のいわゆるベッドタウンのまちづくりって、お洒落になってきている一方で、金太郎飴になっていると感じていたんだけど、国立市は少し空気が違いましたね。
戸村(雄)
学校が多い、いわゆる文教地区なんですね。パチンコ屋や風俗産業の営業がある程度規制されている。そういう街を市民運動で獲得してきたという歴史があるから、画一的になりにくい土地ではあるのかもしれません。
竹田
そういう中に、food commonさんのような店があることが、町の人のプライドにつながっていくと美しいよね。一方で、我々が関わるような食ビジネスって、どうしても大上段というか、母数が大きいじゃないですか。そういう物って、単純に「食」というくくりでひとつにしていいものなのかなと思いますが、どうですか?
戸村(雄)
う~ん視点というか、観ている景色が違うとは思います。もちろん大きな意味でのフードビジネスに興味がないわけではないですが、普通に小さなお店をやっているだけだったら「まあ、大手はそうだよね」とは感じてしまいます。
竹田
大きなビジネスの流れに入ると、食が「商材」になってしまう側面はどうしようもないですよね。例えば、子どもにはいいものを食べさせたいからいい野菜を買ってくる。自分が扱う「商材」は、同じ食でもどこか違ったりする。分業でやっているから、トータルの形が見えないということもあるかもしれない。
竹田
食ビジネスのバリューチェーン化ってまさに循環で、社会インフラにも近いんですよね。「水」が暮らしに不可欠なように、食も不可欠。それを大きなシステムでまかなうというのは、食のベルトコンベヤー化という危険を確かにはらんではいるんだよね。
平井
ミールキットってあるじゃないですか、すべての食材が一袋に収まっていて、ちょっとだけ調理すればいいというような。だったら買ってきたものでもいいじゃないとは思うけれど、朝から晩までフルタイムで働いている親が、子供に食べさせるものだけはひと手間かけてあげたいと思う気持ちに寄りそう商品なんですよね。自己満足と言うのは簡単だけど、「作ってあげたい」という思いに応える商品が生まれている背景には、食はベルトコンベヤー化だけではいけないよねという、我々の根源的な思いがあるのかもしれない。

戸村(雄)
なるほど。分業化せざるを得ない流れがあるというのはわかる一方で、やはり自分たちは自分の食べたいものを作りたい。それが自分たちにとっては健全で、普通のやり方なんだろうなと思います。
竹田
分業化の弊害というのは、クリエイティブな面でもありますよね。落ちてきたものを形にするだけの自称デザイナーや、クリエイティブ・ディレクターがとても多い。形にはできるのだけど、そのものの価値をクリエイトできてないんですよ。
戸村(沙)
個人として「こうしたい」という欲求が、大きなところにいると生まれにくいのかもしれませんね。
竹田
もちろんクライアントの希望を汲まなきゃいけないのは大前提だけど、こういうクリエイトをしていきたいという欲求がなかったら、何でものづくりがやりたいとか言うのかな~なんてね。ちなみに「おいしいものを提供したい」というのは、欲求ですよね。
平井
「健全な」という言葉がありましたけど、自分がいいと思うものを提供していくというのは、すごくシンプルだしストレスがないですよね。
戸村(雄)
組織の中で「こっちの方がいいと思うけど、会社全体の意向でこうしなきゃいけない」という経験をしたからこそ、シンプルな物事の良さが余計大事に思えるというのはあると思います。

“体験”のともなう食の提供を目指したい

竹田
やりたいことをやるというのは、その仕事をどう続けられる状態で維持するかというのもありますよね。常に100%を目指すのは大事だけど、90%の出来を維持して、どう提供していくかということが。それはブランディングにもつながっていくのだとは思うけれど。僕は都心から少し離れたところでカフェをやるという生活はできない。赤坂で「もうかりまっか?」って言っている生活がやっぱり性に合ってる(笑)
戸村(雄)
僕は逆にそれがもう無理です(笑)。満員電車に乗るとか、一度離れちゃうとできないですね。
戸村(沙)
少し前って、東京だったら渋谷がお洒落の中心で、そこに行かなきゃいけないみたいな感覚がありました。でも自分たちが自分たちらしく「普通に」生きていくために、都心である必要はないなと思ったんです。自分たちが普通だと思うものを出していくには国立という土地がちょうどいいかなと。それは人によっては北海道かもしれないし、ほかの地方かもしれません。やりたいことが当たり前にできる場所を探せるというのは、今の時代らしいのかなとも思います。

竹田
若い人はそういう志向があるのかな?
戸村(沙)
もちろん都市の中心にいたいと思う人も周りにはたくさんいますよ。でも、地元だったり、まったく別の地域だったりで、やりたいことをきちんとやっている人も増えていると思います。何を気持ちいいと思うかは人それぞれだけど、個人の欲求を実現することが普通になっているのかな。
竹田
モノからコト(体験)へ、というような話かもしれないですね。
戸村(沙)
「食と体験」という点でいくと、町田さんのところでも収穫体験をさせていただいたり、家族同士集まって餅つき大会をしたりしているんですが、そういう食にまつわる思い出を子どもに作ってあげたいとはいつも思っています。体験した時はそうでもなくても、大人になった時に「あんなこともあったな」と思い出すんじゃないかな。食は体を作るものだけど、深いところで人格形成にも関わるような気がします。
お店でも、普通の家庭では体験できないことを店でしてほしいなという思いがあって、味噌づくりの親子ワークショップも企画しています。味噌なんて買ってきた方が早いし味も安定しているけれど、あえて自分たちで作るという経験を提供していきたい。そういう場としても使ってもらえるといいなと。
戸村(雄)
子供にそういう経験をさせたいという親御さんをつなぐ、ハブにもなれればというのはあります。もちろんこればっかりは蓋を開けて見ないとわからないですが。まさに「味噌」と「店」の発酵の話になりましたね(笑)
戸村(沙)
子供自身、自分が作ったり、採ったりした食材だと嫌いなものでもきちんと食べるんですよね。自慢げに見せてきたりして。さっきの分業化とは逆の話ですよね。
戸村(雄)
味噌づくりも昔はあたりまえのことだったわけですしね。もちろん何もかも昔に戻せと言うわけではないんですが、「そういう選択肢もあるんだよ」というのは提示していきたいなと思います。
平井
これまでって食が後回しになってきた時代だと思うんですね。ライフスタイルにこだわりがあっても、食にはそこまでこだわらないというような。今の20代30代は、両親が共働きという家庭が増えた時代だからこそ、「手作りじゃない物を食べること」が子供の頃から当たり前になっているのかもしれないですね。だからこそ、食の価値が高まってきているという面もあるんじゃないかな。

町と飲食店の関係性

竹田
ちょっと話は変わるけれども、food commonがもし二店舗目を展開するとしたら、店名とか中身は同じになりますか? というのは、町に根づいた店をやっていてそこから町おこしにも成功した人が、別の自治体に声をかけられて二店舗目をオープンしたんです。でもそれが僕の目からは同じ店に見えたんです。「あれ、金太郎飴にしちゃうんだ」と思って。
戸村(沙)
まだオープンしたばかりでわかりませんが、もし違う土地でやるとしたら、その土地に合った形にしかできないんじゃないかなと思いますね。でも町おこしとかで声をかけられるのは、私たちではないんじゃないかな。私たちが営んでいきたい「普通」はこの場所だから見つかったもので、ほかの土地ならまた少し違うと思う。私たち自身が土地の価値を高めるブランディングの手段になれるかという点では、おそらくないでしょうね。
戸村(雄)
そうですね。僕たちは町を構成するディティールのひとつで、町おこしとなったら、全体を見ていかないといけなくなりますから。

平井
でも実績を積んで、それこそ熟成していったら、「ちょっとにぎわい創出に手を貸してよ」というお声がけがあるかもしれませんよ。
戸村(雄)
でも、妻は料理を作るのが好きで、僕は提供するのが好きで。今のところ、二人の目が届く範囲でやりたいし、それをほかの人の手に委ねるというのは考えていないですね。
例えば、親父はお客さんの顔を見て味を微妙に変えるそうなんです。肉体労働者だったら少しだけ塩強めかなとか。これを聞いてすごく感動したし、自分もお客さんひとりひとりにサービスを届けられる店にしていきたい。子どもの頃はサラリーマン家庭に憧れたこともありましたが、やっぱり親父の背中を見て育っているんだなと思います。
戸村(沙)
お客さんとの会話もあるような、まさにこのお店みたいな存在感が私たちの目標ですから。
戸村(雄)
コンビニエンスストアってすごく便利だけど、24時間いつでも食料が確保できるというのは、生活を営む上で実はすごく不自然なんじゃないかっていう気もするんです。もちろん、深夜に働く人は必要だけれど、本来必要ではない人も24時間いつでも働くというようなサイクルになってしまっているのでは?というのが、僕はずっと疑問に思っていたんです。だから、コンビニが24時間営業じゃなくなったり、台風の時にきちんと閉めるというのはすごくいいことだと思っています。「ごはんとライフサイクル」は、やはり紐づいていますから。
戸村(沙)
そうだね。働き方もきっと変わっていくし。小さなお店の存在価値だってこれから変わっていくかもしれない。
竹田
ずっと同じように見えても変わらない物なんてないんですよね。食なんて本当にそうで、5年、10年、20年でどれだけ変わっているか。大きな食ビジネスはより時代の波をつかんでいかなきゃいけないけど、小さな店だって、日々人と関わることで小さな変化はきっと繰り返しているんだよね。
さっきお話を聞いたオケヤファームの町田さんの農業の話もそうだけれど、すべては今の世の中で少しずつ関わり合って循環していく中で、どんな熟成や醗酵が行われていくのか。それは個人の興味としても、ビジネスとしても、食の未来をこれから見すえていきたいという気持ちになったな。

―はい!じゃあもうラーメン出していいかな。今日は休業日だからスープの味が違うけど、よかったら食べてって!―

ありがとうございます! このナルト…醤油の香り…間違いなくうまいやつですね!

ウマーイ!

2019年末、food commonさんのお店が国立市にオープンしました。日々インスタにアップされる写真に「誰か一緒に行かないかな?」って思いながらハートマークを押し続けています。センスが伝わってくるけれど、決して押しつけがましくない、居心地の良さそうな内観。素敵なだけではなく、食べたら元気になりそうと思わせてくれる料理の数々、そして添えられた言葉から伝わってくるお酒や食材への愛情。
「国立ってクオリティ高いよね」。そんな声が聞こえてきそうです。

food common

〒186-0004 東京都国立市中1丁目9-37
KKビル ♯301
TEL 042-505-7614
日・月・火・祝 定休
https://www.instagram.com/food_common/
デザインという言葉は、時に本質をあいまいにしてしまうことがあります。
あくまでも「生活」がベースであり、デザインは、それを飾り立てるものではなく、使いやすく、心地よくするためのものだという基本に立ち返る。 それこそが、我々がこれからの未来を考えるベースになるように思います。
さて、一つだけ今私が企画していることを書いて終わりにしたいと思います。
元赤坂のオフィスにデザインした「WONDERFUL DRINK, ENJOY FOOD.」というコンセプトスペースがStartします。動画配信を中心に「しょく・ひと」をつなげるスペースです。 昨日は東京にはおいしい食事がいっぱいあるねと言い
今日は福岡で食べる糸島の素材は最高と言い
明日は大阪では北新地でも伝統的なお好み焼き屋が良いよねと言う
生活を「おいしい」でつなげたい身勝手なシカケになれば良いなと思っています。
協力:オケヤファーム
〒359-0002 埼玉県 所沢市埼玉県所沢市中富1141-1
TEL 080-7955-8872
https://www.facebook.com/okeyafarm/
協力:京八
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